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書評

『逆境経営 ―山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法』

更新日:2014年04月29日

『逆境経営 ―山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法』桜井 博志/著 『逆境経営 ―山奥の地酒「獺祭」を世界に届ける逆転発想法』桜井 博志/著

<獺祭>(だっさい)

このお酒の名前を皆さん、ご存じでしょうか。

低迷している日本酒業界で、出荷数量1万1400石(一升瓶で140万本)、純米大吟醸という酒別で全国トップというすごいお酒です。2000年からは海外展開も始め、すでに約20ヶ国で販売されています。SFアニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』で主要人物が愛飲していることでも話題になりました。

このお酒を造っている旭酒造は、山口県の山奥の小さな酒蔵です。そしてこの山奥の小さな酒蔵での第一歩は、最初から今のように立派なものではなく、生きるか死ぬかというどん底だったと、本書の著者である旭酒造代表取締役社長の桜井博志氏は語っています。

旭酒造の三代目で長男の著者は、父親から勘当され、日本酒から離れていたそうですが、父親の急逝により酒蔵を継ぐことになりました。その当時、旭酒蔵は山口県岩国市の中で、しんがりの4番手メーカー。日本酒市場の縮小に先行して売り上げは急減、「ロング倒産状態」と揶揄され、当時は圧倒的な負け組でした。自分の死亡保険金をそろばんで弾くほど追いつめられ、ふたりの子どもの寝顔を見ては、将来が恐ろしく、眠れぬ日々が続きました。しかし、背水の陣で何もかも変え、やれることをやってみようと決めます。小さな酒蔵を強みにするために、小規模な仕込みでないと造れない、しかも少量ずつでも愛され続ける純米大吟醸に絞ります。そして地元で勝てないなら、遠くの大きな市場である東京へ、と進出していきます。

いかにして目の前の危機を切り抜けるかという連続しかなく、幾多の困難が待ち受けていたそうです。

十数年後、東京進出も始め、やっとひと息ついた頃、夏場の仕事のために手を出した地ビールの新事業に失敗してしまい、「どうやら旭酒造はつぶれそうだ」と噂を聞きつけた杜氏たちが他の酒蔵へ移ってしまうという大事件が起こりました。悩んだ末、思い切って杜氏制を廃止して、なんと残っていた製造経験ゼロの若手社員4人とともに、自分たちで酒造りを始めたというから驚きです。

また、日本酒業界の常識にとらわれない酒の造り方「四季醸造」なども構築していきます。これは、お酒は冬場にしか造れないイメージがありますが、その常識を覆し、年間を通じて酒を造る方式です。誰もやったことのない、慣習や伝統を壊すことも選択し、批判も受けつつ前に進んでいきました。

どんなに困難が待ち受けても、そこにあった唯一の思いは、ただひとつ。

「ああ、美味しい!」と言っていただける酒を造ることだったそうです。

これだけは譲れない唯一の財産が、そのひと言でした。

本書を読んでいると、どんな困難にあっても「徹底的に『美味しいお酒』を造りたい」という強い思い、熱意が伝わってきます。

日本酒業界の方や、海外進出を目指す地方企業の方などはもちろんのこと、一般ビジネスマン、そして日本酒好きの方にもオススメの本です。本書を読むと、大事なことは守りつつも、変わることを恐れずどんな逆境にもあきらめず立ち向かう勇気がもらえることと思います。さまざまなことが始まる新生活にぜひ、読んでみていただければと思います。

『リーディング3.0―少ない労力で大きな成果をあげるクラウド時代の読書術』

更新日:2012年01月13日

『リーディング3.0―少ない労力で大きな成果をあげるクラウド時代の読書術』本田 直之/著 『リーディング3.0―少ない労力で大きな成果をあげるクラウド時代の読書術』本田 直之/著

スマートフォン、電子書籍の登場やツイッター、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワークが活発に利用されるようになった現在、ビジネス書の読書方法にも変化が起きているようです。

私達は日常生活において必要な情報を、様々な媒体から入手しています。昨今はテレビ、新聞、雑誌、本に加えて、インターネットから得られる情報量がめざましく増え、多くの情報を吟味し、自分に必要な情報をどのように取得し、活かすかという情報力が問われるようになりました。

この本は、「本を読む」という行為について、効率よく多読するためにいかに読み、本から得た情報をいかにストックし、また必要な時に手間をかけずにいかに取り出すかを解説しています。そして、その情報を自ら発信することで得られる良いアイデアをフィードバックする方法も提案しています。

例えば、読書の際に琴線に触れた言葉や文章をメモする時、これまでは紙に書くことが常であったでしょう。しかし、現在はインターネット上のメモ帳とも言えるソフトを使えば簡単に記録でき、また、ジャンルや内容に関するキーワードを付しておけば必要な時に検索をして抽出することも容易です。また、インターネット上のサイトに記録しているため、スマートフォンからもパソコンからもアクセスができ、自宅だけでなく外出先でもその内容を確認できます。

ビジネスにおいてアドバンテージをとるためには、情報力は必要不可欠です。また、情報を得るためには、日々進化するテクノロジーやツールを学ぶことも欠かせません。

この本に書かれていることを全て実行することは難しいかもしれませんが、効率的な情報収集のためにこの本を読み、できることから実践してみませんか。

『スターバックス再生物語―つながりを育む経営』

更新日:2012年01月13日

『スターバックス再生物語―つながりを育む経営』ハワード・シュルツ/著 『スターバックス再生物語―つながりを育む経営』ハワード・シュルツ/著

企業をはじめとした、あらゆる組織の経営に必要なものは何なのか。
その疑問に対する答えへの道筋を示してくれるのがこの本です。

著者の一人であるハワード・シュルツは、当初コーヒー豆の販売のみを行う小さな会社であったスターバックスを世界的な企業にした人物であり、現在のCEOでもあります。一度はCEOを引退したものの同社の業績悪化に伴い、2008年にCEOとして復帰しました。

そのCEOへの復帰から、スターバックスが存亡の危機を脱するまでの2年間の奮闘ぶりがこの本で述べられています。そしてそこには経営に関する重要なエッセンスが散りばめられています。

例えば、優良な経営を行うには戦略やイノベーションが欠かせませんが、ハワード・シュルツはそれだけではなく、経営には中核となる理念が必要であると考えています。
彼の求めるスターバックス像は単なるコーヒーを提供する店ではなく、最高のコーヒーを提供することで人や地域コミュニティーとつながりを持ち、第3の場所として各々が素敵な体験をする場所であることです。

立て直しを迫られた厳しい2年間に様々な問題に直面し、対処する中でも、この理念はいつも彼の中心にあり続けました。

名経営者と言われる人々は、経営に関して揺るぎない信念を持っています。それは成功を手に入れ、また成功を持続させるために必要なことかもしれません。また、様々な組織で活躍する人々にとっても、そのような信念を持つことは必要なことかもしれません。

この他にもリーダーに求められる能力など、参考になる事柄が多く書かれています。未来へ向かって進化し続けようと考えている人を始めとして、多くの方に読んでいただきたい1冊です。

『入社1年目の教科書』

更新日:2012年01月13日

『入社1年目の教科書』岩瀬 大輔/著 『入社1年目の教科書』岩瀬 大輔/著

先日広島市立図書館で、起業を目指す人たちの講座『創業アカデミー』を開催いたしました。これはビジネス支援の一環として中小企業支援センターと共催で実施しているセミナーです。
参加者の皆さんは起業という夢をより明確にし、最初の一歩を踏み出されたのではないでしょうか。

この本は、その最初の一歩のように来るべき「勝負どころ」をつかみ、近い将来飛躍できる人になるために、どのように準備して、実践していくかがキーポイントとなっています。この「勝負どころ」はいつ訪れるかわからない、チャンスが目の前に来た時に、それに気がつき、おもいっきり跳ぶことができる人になれるようにと唱えています。

この著者は東大出身でハーバード経営大学院の日本人4人目のベイカー・スカラー(成績優秀者5%表彰)として終了、帰国してライフネット生命保険の設立に参画して副社長になり、世界経済フォーラムの「ヤンググローバルリーダーズ2010」に選出されるなど、華麗なる経歴を持っています。興味深く読んでみると、意外にも内容は、新人もベテランも再認識するような仕事上の基本や指針です。

仕事の大原則は次の3つ、「頼まれたことは、必ずやりきる」「50点で構わないから早く出せ」「つまらない仕事はない」とし、これを絶対死守することで、チャンスが到来し、そのチャンスを一つずつものにしていくことで、仕事がよりダイナミックに進化して面白くなっていくと提言しています。
なにがチャンスに結びついていったのかという点では、「徹底度」「スピード」「視点」に絞り込んで実践したことではないかと思います。またそのための、具体的なアドバイスが書かれており、何にポイントをおいたらいいのかを、明確で実行しやすく紹介しています。

おもしろかったのは、おわりの章で、著者にテレビ出演の依頼がきて、本番までの経緯が描かれていますが、この機会を「勝負どころ」ととらえ、まさに総力戦でそのチャンスをとらえるために準備を完璧にしようとする姿は、目を見張るものがあります。

日頃からひとつひとつ丁寧な準備を心掛け、すこしだけ行動を変えてみたら、見える世界も変わってくる、この本を読むだけでも一つの準備となるかもしれません。チャンスの到来を待って、ぜひ一読をされたらいかがでしょうか。

『日本の優秀小売企業の底力』

更新日:2012年01月13日

『日本の優秀小売企業の底力』矢作 敏行/編著 『日本の優秀小売企業の底力』矢作 敏行/編著

1990年代初めをピークに、日本の高度経済成長を牽引してきた小売業界の元気が低下し始めてから約20年が経過しました。

今後の国内の消費市場を見ても、少子高齢化による人口減少に併せて、15歳以上65歳未満の人口が、これからの50年間で現時点より4割程度減少すると推計されています。消費活動が活発な世代の減少は消費の減少にもつながり、日本経済市場の今後も明るいとは決して言い切れない状態です。

しかし、そんな厳しい状況にあっても、独自の信念を貫き、優良な経営を持続している企業があります。

この本ではスーパー、コンビニエンスストア、ホームセンター、家具専門店、家電量販店、衣料専門店、百貨店といった様々な業態で長期間元気な企業9社をピックアップし、それぞれの企業の歴史や背景を追いながら、市場戦略だけではなく組織能力にもスポットを当て、各企業の持つ「底力」を研究、分析しています。この9社には、広島に本社を置く「イズミ」も含まれています。

元気な企業の「底力」とはどのようなものなのでしょうか。また日本の小売企業に明るい未来はあるのでしょうか。

編著者であり、小売業における経営革新の研究者でもある矢作氏は、日本小売企業の潜在的な組織能力は優れているとしつつ、成熟した市場では自社しか提供できない顧客価値の創造、独自商品の開発や店舗運営の革新をはじめとした新たなサービスやモノを作り出す仕事のやり方が重要であることを述べています。

現在置かれている小売業の状況を確認するとともに、この本で示されている成功事例から経営のヒントを得ることができる1冊です。

『彼女はなぜ「それ」を選ぶのか?―世界で売れる秘密』

更新日:2012年01月12日

『彼女はなぜ「それ」を選ぶのか?―世界で売れる秘密』パコ・アンダーヒル/著 『彼女はなぜ「それ」を選ぶのか?―世界で売れる秘密』パコ・アンダーヒル/著

なでしこジャパンがついに、強豪チームを破り、W杯世界一を果たした。

環境が整っていない中で、サッカーを続けてきた「絶対あきらめない」精神は、どの試合にも、その気迫を感じられた。このなでしこジャパンが象徴するように、近年女性は力強く、自立した存在になり、世界のビジネスや文化にまでも、大きく影響をもたらしている。

そういった10年の流れを汲みながら、この本は、2001年にベストセラーになった「なぜこの店で買ってしまうのか‐ショッピングの科学」に続くパコ・アンダーヒルの新作である。
本書で取り上げられるのは、女性の社会的役割やライフスタイルの変化による、女性が望む条件について、住宅、トイレとお風呂、ネットショッピング、ホテル、ファッションまたフェイスブックやツイッターなどに関わるあらゆるジャンルにおいて、具体的に事例をあげながら検討し、変化や対策を解き明かしている。
読みながら思わず「わかるわかる」と女性として消費者として共感し、またマーケティングの理論としても具体的でわかりやすい。女性が好み重視するのは、清潔であること、調節できること、安全であること、思いやりがあるかということだと、著者は唱えている。

冒頭に、日本の読者へという序文で、今後女性に焦点を合わせることは、おそらく世界のどの国よりも、日本においては重要だと思うと述べているが、女子力という言葉がビジネスの世界でも使われるようになり、昨日の新聞にも女子会で勉強会という記事が載っているのは、まさにそのとおりの現象であろう。
今話題の「もしドラ」も、女子高生がドラッカーを読んでマネジメントし、野球部を甲子園へ連れていくというストーリーであるが、今世界の流れは、彼女たちをマーケティングし、また彼女たちがマネジメントしていく時代なのだろうか。彼女たちが今何を求めていて、どう世界が動いていくのか、ぜひ一読をおすすめしたい。

『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ』

更新日:2012年01月12日

『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ』子安 大輔/著 『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ』子安 大輔/著

食べるラー油やハイボールはなぜヒットしたのか。

著者の子安氏は飲食店のコンサルティングなどを行っており、飲食業界に深く関わる人物です。
子安氏はこの本で、「食べるラー油」の爆発的ヒットの要因の一つとして、「かける」だけだったラー油を、揚げたたまねぎやニンニクをたくさん加えることで「食べる」ものへ転換した点を紹介しています。
また、「ハイボール」の人気の秘密は、一杯目のビールの後の二杯目の市場に着目したことではないかと述べています。

これら商品の流行の背景には、例えば「ラー油」であれば、「かける」ものから「食べる」ものへというような視点の転換が大きく関わっていると言えます。

ブレーンストーミングの考案者でもあるオズボーンのチェックリスト法にもあるように、「他の使い道がないか」、「応用できないか」、「修正したらどうか」、「拡大したらどうか」などの多くの視点から1つの事象を捉えることは多彩な発想を生みます。
この柔軟な発想によってこれまでの価値観を崩し、新たなモノを生み出すことは、飲食業界に限らず現代のビジネスにおいても必要な販売戦略の手法です。

このほか、本書では「夜に食べる朝ごはん」や「飲み放題はなぜ儲かるのか」などの様々な食の話題についても考察をしています。ヒット商品の裏に潜む消費者の動向や時代が求めているものを捉えつつ、固定観念にとらわれず物事を多角的に見つめることで得られるヒントを、それぞれの持ち場で活用してみませんか。

『人を助けるとはどういうことか』

更新日:2012年01月06日

『人を助けるとはどういうことか』エドガー・H・シャイン/著 『人を助けるとはどういうことか』エドガー・H・シャイン/著

「今、自分に何が出来るだろう?」2011年3月11日未曾有の震災からこの2か月の間、世界中の多くの人がこのことを考えずにはいられなかっただろう。

しかし現実には、人を支援するということは、なかなか簡単ではない。この本は今まで見過ごされてきた「支援学」の入門書であり、支援とは相手の役に立つこと相手にそう思ってもらえる行為である。これをうまくできるようになるには、どんな原理・原則を知る必要があるのか、多数の日常的な例示を活用しながら考え方を整理している。

2010年ビジネス書でも話題になった本である。

成果をあげるチームワークの作り方として、メンバー全員の人間関係を作ることであり、支援関係の状態をつくることであるという。われわれは日々仕事をしていくなかで、チームワークをつくっているが、支援関係がもとになっているとは考えにくい。

私たちが助けてもらうときは、下にいるような気持ちになり、助けてあげるときは、上にいる気持ちに感じることが多い。それは職場でも家庭でも社会関係で常々感じることであり、だから人を単純に助けるということがむずかしいと考える所以である。リーダーに助けられたり、またリーダーを助けたりで、チームワークとして成立し、成果をあげる。

仕事をする上で、チームワークがお互いの支援であるという具合に考え直すだけでも、チームは変わるのではないか。この震災で、人を助けるとは、支援するとはどういうことかと考えさせられたこの機会に、自分の身のまわりの人間関係について考えてみてはどうでしょうか。

『ダメ情報の見分けかた』

更新日:2012年01月06日

『ダメ情報の見分けかた』荻上 チキ/ほか著 『ダメ情報の見分けかた』荻上 チキ/ほか著

日常生活において、情報の重要度や真偽をどのように見極めていますか。

インターネットやテレビの報道など、様々なメディアから多種多様な情報が発信される現代では、チェーンメールやネット上のデマ、根拠のない噂に、時折、翻弄されることがあります。最近では、東日本大震災の発生直後に、実際は送電予定がないのにもかかわらず、中国地方から関東へ送電するための節電を呼びかけるチェーンメールが飛び交うという出来事がありました。

今回ご紹介する本は、このような状況に遭遇した際にどのように対処すればよいのか、また、現代社会に必要なメディア・リテラシーとは何かを説いた本です。

流言やデマに関わることで受ける被害を最小限に留めるには、確かだと思われる情報を得るためのリサーチ力や確からしさを検証する力が必要であること、また確かでない情報が広がらないための環境づくりとして発信力が求められているという現代のメディア・リテラシーの課題をはじめとして、膨大な量の情報から、ダメな情報を振り落とすにはどのような観点で判断すればよいのかなどについて、メディア評論家、経済学者、社会学者の3人が論じています。

ビジネスをはじめ、私達の生活に.情報は必要不可欠です。いかにその情報とうまくつきあうかについて、この本を通して考えてみませんか。

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』

更新日:2011年11月13日

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』松下 幸之助/述 『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』松下 幸之助/述

皆さんは松下政経塾をご存知でしょうか。その名のとおり、松下電器(現Panasonic)の創業者である故松下幸之助氏が私財を投じて創設した、政財界の指導者を養成するための全寮制の私塾です。本書はこの松下政経塾での松下幸之助氏自身による講話のなかから厳選された、リーダー教育の参考になる48項目が掲載されています。

「自分の境遇を受け入れる」では、松下氏自身が丁稚奉公に出ていた時の経験をこのように話しています。

「向かいの家の坊ちゃんはぼくと同じ年で、中学へ行く。ぼくは中学へ行かずに掃除をしている。それをぼくはつまらんとは思わなかった。当たり前やと。(中略)毎朝むこう三軒両隣の掃除をして、そのあと水をまくというようなことから、商売のコツもわかってくる。それが立派な修行になったわけやな。」

掃除から全てを学ぶという氏の想いは強く、本書でも掃除の重要性が何度か語られます。「『掃除』で政治の要諦をつかむ」では、掃除にまじめに取り組まない塾生がいることに対して、次のように説いています。

「なぜ政経塾で掃除というものをさせるかというと、掃除から政治はいかにあるべきかということまで発想できるからや。(中略)諸君は他の何についてもそういう見方をしないと、非常に浅くなってくる。深いものをくみ取ることができないわけや。」

松下氏の発する言葉の一つ一つが氏の経験に裏打ちされたものだからこそ、激変する現代においても、変わることなく多くの人に支持されているのだと思います。

この6月には続編も発行されたので併せて読んでみてください。混迷の世を生き抜くヒントが見つかるかもしれません。