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書評

『吉田基準~価値を高め続ける吉田カバンの仕事術』

更新日:2015年12月15日

『吉田基準~価値を高め続ける吉田カバンの仕事術』吉田 輝幸/著 日本実業出版社 『吉田基準~価値を高め続ける吉田カバンの仕事術』吉田 輝幸/著 日本実業出版社

「吉田カバン」という会社名を聞かれたことがありますか?

「ポーター」という名のカバンの会社として知っている方や、機能性を重視したおしゃれなカバンをつくる会社としてすぐ思い浮かべる根強いファンの方も多いかもしれません。

吉田カバンの看板商品である「タンカー」というシリーズのカバンは、1983年(昭和58年)に発表され、素材、軽さ、デザイン性、クオリティの高さは、30年以上支持されています。基本的なデザインを変えず、細かい部分でマイナーチェンジしながら、機能性、耐久性に関わる箇所を改良し、学生からサラリーマンそしてシニア層に至るまでの幅広い世代に、愛用されているそうです。

この本は、吉田カバンの代表取締役社長である吉田輝幸氏(吉田カバン創業者吉田吉蔵の次男)の著書で、創業80年の吉田カバンの姿勢や仕事の進め方、吉田カバンの品質を支える各部門のプロフェッショナルな職人さんたちなどについて書かれています。書名の「吉田基準」とは、社訓や品質基準マニュアルではなく、製造に携わる職人さんたちから自然発生的にできた言葉で、「吉田クオリティ」、「吉田らしさ」と言われることもあるということです。

その「吉田基準」とは何なのか。それは、吉田カバンでは、チームワークのとれた日本国内の職人さんが、よりよい商品を作り上げるためにデザイナーと真剣勝負を繰り広げながら手作業で生産し、メイドインジャパンを貫いていることです。また、基本的に値引きはせず、「商品が語ってくれる」と広告を出すことはせず商品説明に力を注ぎ、継続販売の姿勢を続けることで、ロングセラーを生み出していると述べています。

この吉田カバンのいろいろな経営手法のこだわりも紹介されていますが、たとえば、創業以来自社工場をもたず、商品は国内48か所にある工房で製作されており、多くは自宅兼作業場で1人2人で製作しています。そのため職人に余計な負担を増やさないよう、商品にバーコードをつけないことなど、商品づくりに何よりも優先順位をおいています。

この本から、長く世代を超えて愛される商品を世に出し続けている会社の、ものづくりへのプロ意識を知ることができます。「吉田らしさ」は「もっとクオリティをあげるものづくり」であり、その「ひとづくり」であること、その信念はすべての仕事に通ずる「基準」であると思います。ぜひ、カバン屋としてどうあるべきかを考える姿勢と心意気を、感じていただければと思います。

『和僑』

更新日:2015年11月17日

『和僑』楡 周平/著、祥伝社 『和僑』楡 周平/著、祥伝社

著者の楡周平は1957年生まれで、米国系企業在職中に執筆したデビュー作『Cの福音』(1996年 宝島社)は30万部を超えるベストセラーとなりました。翌年から作家に専念し、『猛禽の宴 続・Cの福音』(1997年 宝島社)、『フェイク』(2004年 角川書店)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』(2008年 講談社)など、ミステリーや経済小説を中心に執筆しています。

この小説は、2008年に出版された『プラチナタウン』の続編です。
出世街道から落ちこぼれた総合商社部長の山崎鉄郎が、やけになって故郷宮城県緑原(みどりはら)町の町長を引き受け、老人向け定住型施設プラチナタウンの誘致に成功します。
人口が15,000人を切っていた緑原町にプラチナタウン開設で8,000人が入居し、新たに600人の雇用が生まれました。財政破綻寸前だった町は見事に回復し、シャッター通りとなっていた商店街も賑わいを取り戻していました。プラチナタウンのお蔭でUターンも増え、過疎高齢化問題も解決したかのように見えました。
しかしプラチナタウン開設から4年、町は危機を脱したものの、町の活況がプラチナタウンに依存しているという構図ができ上がっており、将来を見据えた新たなビジョンを確立することが必要となります。独居老人の増加、町の主要産業である畜産業に襲い掛かるTPP、農業従事者の高齢化と後継者不足、耕作放棄地と空き家問題、そしていずれやってくるであろう高齢者人口の減少といった課題がある中、町議会はその対応策として従前どおりの考え方でプラチナタウンの事業拡張を提案しようとします。それを打開し、町が生き残るための方策として思いついたのがB級グルメの緑原ブランド確立と海外進出でした。優秀な産業振興課課長の工藤登美子をパートナーに、緑原町の現状を見つめ熟考を重ねる山崎。そしていよいよ計画実行となったとき、彼はある決断を下します。その決断とは......。

様々な困難を克服していく様子は上手くいきすぎる感じも受けますが、実社会の問題も織り交ぜながらテンポ良く書かれており、一気に読み進めることができます。前作の『プラチナタウン』を読んでいなくても充分楽しめます。また、町を活性化させるために何を誰にどう売るのかを考えていく過程は、実際にビジネスプランを練るうえで参考になりそうです。
ぜひ、読んでみてください。

『"ひとり出版社"という働きかた』

更新日:2015年10月15日

『 『"ひとり出版社"という働きかた』西山 雅子/編 河出書房新社

「『小商い』と呼ばれるかたちで届けられたものやサービスが、私たちの生活を豊かにしています。自分の信じる仕事を、自らの責任で、信じる人々とのつながりを築きながら成立させようとするビジネス。それは自分らしい働き方を実現するひとつの方法として、広がりをみせています。」
編者のこの「はじめに」の言葉にあるように、大手企業の商品やサービスだけでなく、その隙間を埋める小さなビジネスの成果があるからこそ、世の中は充実し、また、そのような働き方をすることで、その人の人生も充実していくのでしょう。

この本は、一人で本を出版しようと立ち上がった10社の「ひとり出版社」と呼ばれる人々を取り上げ、彼らがこの道に入った経緯や、これまでどのような仕事をしてきたのか、また、この仕事を通して、何を表現したいのかをまとめたものです。

「子どもと一緒に晩御飯を食べるため」、「本質的に必要なことを見極め、自分らしく生きていくため」など「ひとり出版社」を始めるきっかけはそれぞれです。出版や編集の経験の有無、どのような本を作り、それをどのように流通させているかも、様々な形があります。
ただ、共通しているのは、効率的に利益を生まなければならない大手出版社が作る本とは異なる本を作ること、そして、その本の魅力を誰かに伝えたいという強い思いがうかがえることです。

大手出版社が作ることのできない個性的な本にも、必ずその読者はいます。また、インターネットの普及により、出版や流通の仕組みも大きく変わり、大手取次を通さなくても、読者に本を届けることができるようになりました。
「ひとり出版社」はその小ささを生かし、作りたい本を作り、それを求める書店や読者とつながり、日々の仕事をしています。

働き方は生き方です。
この本は、自分の仕事を振り返り、生き方についても考えるきっかけとなる一冊です。

『マーケット感覚を身につけよう-「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法』

更新日:2015年09月15日

『マーケット感覚を身につけよう-「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法』ちきりん/著 『マーケット感覚を身につけよう-「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法』ちきりん/著

「マーケット感覚」とは何でしょうか?

「マーケット」=「市場」とは、不特定多数の買い手(需要者)と不特定多数の売り手(供給者)が、お互いのニーズを充たしてくれる相手とマッチングされ、価値を交換する場所のことです。著者は、日々変化していく現代社会で求められる能力は、これまで重要視されてきた「論理思考」だけでなく、「売れるものに気づく能力」または「価値を認識する能力」、つまり「マーケット感覚」であると言います。この「マーケット感覚」の有無によって、同じモノが、同じ人が、そしてまったく同じ環境が、「なんの取り柄もないモノ」に見えたり、「大きな価値のある、これからの世の中で強く求められるモノ=売れるモノ」に見えたりするということです。これはビジネスの場面だけでなく、すべての人の働き方や生き方に関わってくる能力であり、なぜそれが必要なのかを図解や事例を用いて説明しています。

例えば、「婚活」といえば、以前は「紹介された数人から選ぶ」という方法が主流でしたが、インターネットの普及により、今では「世界中の人から自分に合った人を選ぶ」という市場の仕組みができ、活用する人が増えています。そのことによって、取引は市場化したのに、市場における自分の売り方がわからない人が多く、「結婚したいのにできない」人が増えています。「就活」も同様で、市場化の進む社会では、需給の変化に合わせて、自分のスキルや専門性をシフトする柔軟性や決断力が何より重要になるということです。

また著者は「マーケット感覚」の一例として、北海道砂川市の小さな本屋「いわた書店」が、「あなたに合う本を一万円分、選んでお届けします!」という本を売るのではなく選ぶということを商品にしたサービスを始めて、全国から注文が殺到したことをあげています。

そして、「マーケット感覚」を身につけるために有効な方法として「プライシング(値付け)能力を身につける」「インセンティブシステム(動機から言動に至る仕組み)を理解する」「市場に評価される方法を学ぶ」「失敗と成功の関係を理解する」「市場性の高い環境に身をおく」の5つを紹介しています。この中で興味深いのは、「市場に評価される方法を学ぶ」と、「失敗と成功の関係を理解する」の2つです。従来の「組織」の意思決定は「決めてから→やる」という流れで行われていましたが、「市場」では「やってみてから→決める」という流れになってきており、「市場」に向き合って失敗をしながら市場からのフィードバックを受け取り進化していくという新しい成功へのプロセスの大切さを述べています。

著者は、証券会社勤務後アメリカの大学院に留学、外資系企業勤務を経て2011年から文筆活動に専念しています。社会派ブログ「Chikirinの日記」は、日本有数のアクセスと読者数を誇る実績を持っており、本書は非常にわかりやすく読みやすく書かれています。

「マーケット感覚」を研ぎ澄ますと、世の中の見え方が変わり、ビジネスでも、そしてさらに生きていくうえでも最大の指南になるかもしれません。みなさんも是非一読して、「モノ」を見るのではなく「価値」を見る方法を身につけてみませんか。

『ローマ法王に米を食べさせた男』

更新日:2015年08月18日

『ローマ法王に米を食べさせた男』 高野 誠鮮/著 『ローマ法王に米を食べさせた男』 高野 誠鮮/著

この本は、2012年4月に同タイトルで単行本として刊行したものに加筆・訂正され、新書化されたものです。「スーパー公務員」と呼ばれる数々の仕事ぶり、考え方が紹介されており、最近、この本を原作にドラマ化されて話題にもなっています。

著者の高野誠鮮(たかの じょうせん)は、現在、石川県羽咋(はくい)市教育委員会文化財室長(2013年~)です。大学在学中から雑誌ライター、テレビ番組の構成作家として働いていましたが、28歳のときに事情により地元に帰らなければならなくなりました。いずれは実家の寺を継ぐ予定でしたが父親は健在で、小さな寺に住職は一人で十分ということで市臨時職員に応募し採用されます。これが「スーパー公務員」の始まりとなりました。

羽咋市は能登半島の付け根に位置し、総人口は約2万3000人(2015年)の小さな市で、彼に言わせれば「希望がない町」でした。彼は採用2年目、教育委員会社会教育課 青年教育担当として「町づくり、村おこし」を任されます。予算0円という状況で、郷土愛が深まった『羽咋ギネスブック』の作成・配布、町の古文書からヒントを得た「UFOで町おこし」などの事業を成功させて羽咋市をアピールします。その実力を買われ、1990年に臨時職員から正規職員に任命されました。採用されて5年半、35歳でした。

ところが2002年4月、上司に反抗したことから農林水産課に"飛ばされて"しまいます。しかし、彼はここで中山間地域の現実を目の当たりにすることになりました。なかでも神子原(みこはら)地区はほとんどが農家で一年間の平均所得もわずか87万円、若者は離村し農業後継者も不足、耕作放棄地も増加、集落機能も失われつつあり、残っている高齢者も故郷に誇りを持てないといった状態でした。20年間で人口が37%減少し、2004年12月には約170世帯530人となり、65歳以上が住民の半数を超える"限界集落"となっていたのです。

2005年、彼は市長から過疎高齢化集落の活性化と農作物のブランド化を任されます。イギリスの領事館員がオーナー第1号となった「棚田オーナー制度」、他県から若者を呼び込んだ「烏帽子親(よぼしおや)農家制度」など数々の事業を実施しました。なかでも地区再生の象徴的な事業となったのが「神子原米(みこはらまい)のブランド化」と「農家経営の直売所開店」でした。ローマ法王に献上した米という付加価値で以前の3倍以上の値段で米が売れ、直売所では月に30万円を売り上げる人も現れるほどになりました。そして何よりも、農家に活気が生まれてきたのです。

彼のビジネス手法は、会議はしない、企画書も作らない、上司には事後報告とかなり強引に感じられますが、理解者を得ることで地区の再生と活性化を実現させていきました。理解者を得、さらに相手に納得してもらうには、いかに心を動かし人を動かすかが大切で、彼のやり方は一見不可思議に思ってしまいますが、そこには緻密な戦略が隠されており、とても参考になります。

「可能性の無視は、最大の悪策」-彼の行動にはこの考えが常に根底にあります。あれこれ考えて前に進めなくなったとき、いかに「行動」していくかのヒントが詰まった一冊です。

『早く正しく決める技術』

更新日:2015年07月15日

『早く正しく決める技術』出口 治明/著 『早く正しく決める技術』出口 治明/著

仕事で正しく決断できますか?

この本では、大手生命保険会社を退職後、戦後初、独立系の生命保険会社をゼロから立ち上げた著者が、世界共通で考えることができ、自身の会社でも実行している「決める」ルールを解りやすく紹介しています。

著者は、仕事上の「決める」原則は、目的に照らし合わせて「どちらのほうがベネフィット(便益)が高いか」で選ぶことであり、上司の顔色や仕事の哲学などは、正しい決断を邪魔する「余計なこと」でしかないと言います。判断基準は「数字」(データ)、「ファクト」(データに関する事項や過去の事実)、「ロジック」(数字とデータから組み立てられる理論)の3つのみというシンプルな仕組みです。

多様な人々のグループの中では、それぞれの文化特有の考え方や価値観も通じず、日本企業のように「空気」も通じません。「国語でなく算数で考えろ」、すなわち「数字・ファクト・ロジックで考えろ」というのは、全世界共通のビジネス上で通用するルールであり、また、年齢差や性別、国籍の違いに関係なく誰もが共有できる「数字・ファクト・ロジック」で話し合えば、結論を導きやすく、意思決定も早くなるということです。

具体的な例として、著者の会社で、一般的な保険会社では加入制限を設けている27週を過ぎた妊婦でも入れる保険が「数字・ファクト・ロジック」で検討した結果できあがった、というエピソードが紹介されています。

また、「数字・ファクト・ロジック」を具体的にどのように見つけるか、それらをどのように考え、どのように活かすのかについても丁寧に解説されており、1日10回ネット検索をし効率よく一次情報のデータを探し出すというトレーニングは今日からでも取り組めそうです。

もちろん、話し合う前提として、目的を共有する重要さや、より正確な解を導き出すために、多角的に考えること、自分が本当に納得するまで自分のアタマで掘り下げて考えることの重要さも書かれています。

さらに、著者は、どうしても決められないときは、「直感」で決めているそうで、直感は、脳の中にあるこれまでの人生で得てきた情報を無意識レベルで脳内検索した結果であるとし、直感を鍛え、精度を上げる方法についても記されています。

最後に、決断できない人の根本的な誤解として、「仕事が自分の人生にとって重要だと思いすぎていること」と「仕事で決断することは難しいと思いすぎていること」だと述べ、仕事をしている時間は人生のたった3割程度で、失敗したとしてもそれがすべてではないと言っています。そう考えれば、直感を信じ、思い切って決断することもできるのではないでしょうか。

ごちゃごちゃしていた頭の中が、読後、すっきりと整頓され、正しく決断できそうな気分になる一冊です。

まずは「直感」を鍛えるために日々いろいろな情報を脳にインプットしてみてはいかがですか。

『世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』

更新日:2015年06月16日

『世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』安西 洋之/著 『世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』安西 洋之/著

今回ご紹介する著者の安西洋之氏はイタリアのミラノに在住し、アジアとヨーロッパの企業をサポートするビジ ネスプランナーとして活躍中で、商品企画や販売戦略の多数に参画しています。2011年に日経BP社から中林鉄太郎氏と共著で出版した『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?』の中で「世界で売れる8つの日本製品」としてキッコーマンの醤油や、公文式学習法をとりあげるなど、この著者の着眼点はとてもユニークです。

この本は、これから日本の中小企業やベンチャー企業が生き抜き、飛躍するためのヒントを、米国、イタリア、ドイツ、フランス、英国そして日本で活躍 していて元気な企業約20社のトップに、「企業が伸びるための3つの成長の鍵」と「外国とビジネスをするうえでのコツ」についてインタビューをし、その回 答と著者の着眼点を非常にわかりやすく紹介したものです。

各企業のトップが紹介したキーワードのなかから、「デザイン」「ルールメイキング」「オープン」「ローカル」の4つを取り上げ、それぞれの考え方 と、事例やヒントを紹介しています。たとえば「デザイン」については色やカタチという意匠レベルのデザインだけではなく、社会・事業・組織のようなものも デザインの対象としてとらえ、どちらも重要であるとしています。

また、私がおもしろいと思ったのは、近年、企業の成長においてよく使われることばである「グローバル」についても、「ビジネスは最終的にローカルでしかあり得ない」とし、対象の市場の声や事情に耳や目を傾けることが大切であると「ローカル回帰」の重要性を説いています。

日本の中小企業のこれから目指す方向の事例として、山口絵里子氏が「途上国経済の自立とビジネスによって後押しする」という理念をかかげ創業した「マザーハウス」や、糸井重里氏の運営する「ほぼ日イトイ新聞」を紹介しています。これからの日本の中小・ベンチャー 企業の経営のヒントが詰まっていて、また海外市場で成長していくうえでの必須な情報がまとめられています。どれも実践的なアドバイスがたくさん盛り込ま れ、ビジネスを考えるみなさんに読んでいただきたい一冊です。

『『四季報』で勝つ就活 東洋経済編集長が教える!』

更新日:2015年05月15日

『『四季報』で勝つ就活 東洋経済編集長が教える!』田宮 寛之/著 『『四季報』で勝つ就活 東洋経済編集長が教える!』田宮 寛之/著

書名にある「四季報」という雑誌を、誰でも一度は目にしたことがあると思います。企業の設立年月をはじめ、総資産や資本金、従業員数や平均年齢のほか、売上高や営業利益、初任給や内定者数など様々な企業情報が記載されており、株式投資をする方、ビジネスで販路開拓や営業を担当する方などにとっては必須の雑誌です。また、就職活動をする学生にとっても、企業研究に欠かせない雑誌となっています。

この本は、東洋経済HRオンライン編集長である田宮氏が、「四季報」を使って企業研究をするための方法を紹介しており、「四季報」の見方・使い方がわかりやすく書かれています。「会社四季報」、「就職四季報 総合版」・「就職四季報 女子版」・「就職四季報 中堅・中小企業版」、「会社四季報 業界地図」などに分けて解説してあり、「四季報」のどこを注目して見るのか、それぞれのデータをどう読み解くのか、企業研究を深める77のポイントが紹介されています。また、★の数で各ポイントの重要度がわかるようにもなっています。

では実際に、就活にどう活用するのでしょうか。読み進めていくとコツが見えてきます。例えば、年収や設立年月と平均年齢、筆頭株主と社長、特色と連結事業など、各項目を組み合わせて比較することで企業の状況がより具体的に見え、また、同業他社と比較することで業界の様子もわかります。このように比較し、分析することで、自分に合った企業はどこか、働きやすい職場かどうか、将来性のある有望企業かどうかなど、就活に役立つ情報を得ることができます。

また、四季報記者の独自取材による業績予想記事や企業評価の手掛かりとなるコメントがあり、プラス情報だけでなく企業のHPからは得られないマイナス情報も書かれています。たった9行のコメントですが、このような客観的・中立的な分析はなかなか得られない情報で、企業を選ぶうえでとても参考になりそうです。

社会人の方にとっても、この本は大いに役立ちます。「四季報」を活用し、企業研究を深めてみてはいかかでしょうか。

『新入社員に贈る一冊』

更新日:2015年04月15日

『新入社員に贈る一冊』経団連出版/編 『新入社員に贈る一冊』経団連出版/編

4月です。
あなたの周りに、「新入社員」はいませんか。

この本は、著述業者や学者、評論家、文化人、芸術家、芸能人、経営者、組合リーダー、弁護士など多彩な50人が、新入社員に読んでもらいたい一冊を紹介したブックガイドです。
そこには本の情報だけでなく、各筆者の新入社員に伝えたい思いがそれぞれあふれており、ブックガイドであるとともに、ライフガイドでもあります。
たとえば平成26年国際アンデルセン賞作家賞を受賞した上橋菜穂子氏は『ともしびをかかげて』(ローズマリ・サトクリフ/著)という一冊を「社会が激動してしまったために、辛い目に合ったとしても、人はみな、なんとか生きて行かざるを得ないのです。」というメッセージとともに紹介しています。
また、評論家の呉智英氏は『城下の人』(石光真清/著)を「人生の節目に読んでおいたほうがいい本であり、読みやすく、面白く、上役が一目置き、扱いやすい本である」という理由で推薦しています。上役の目を意識する、これは社会人には必要なスキルで、とても実践的なアドバイスです。
新しい一歩を踏み出した新入社員が、道に迷ったり、立ち止まったりしたとき、きっと1冊の本が役にたちます。その本が、信頼のおける人生の先輩の温かいメッセージとともに贈られたものならなおのことではないでしょうか。
あなたの周りの新入社員に、この本と一緒に、あなたがおすすめする1冊を贈ってみませんか。それが彼らにとって、人生を変える運命の1冊との出会いになるかもしれません。

さて、広島市立中央図書館では、4月18日(土)から6月17日(水)まで企画展「応援します!広島のビジネス-広島市立図書館ビジネス支援サービス10周年」を開催します。そこでは、産業支援機関の担当者から、これからの創業者や経営者、次世代を担う若い世代を対象に「あなたに届けたい一冊」を紹介するコーナーを設けています。
あわせてこちらもぜひご覧ください。

『ひろしま本通物語-577mの「舞台」に息づく人間模様』

更新日:2015年03月17日

『ひろしま本通物語-577mの「舞台」に息づく人間模様』井川 樹/著 『ひろしま本通物語-577mの「舞台」に息づく人間模様』井川 樹/著

広島人は「街へ出かける」と言えば本通り界隈に出かけるということで、「本通り」はいつも多くの人が行き交い、賑わいをみせています。この本は副題に「577mの「舞台」に息づく人間模様」とあるように、本通り商店街の歴史と人間ドラマが、現在・過去・未来の視点で書かれています。被爆前、1957年(昭和32年)頃、2000年(平成12年)、そして2013年(平成25年)の本通りの地図が掲載されていて、商店街の変遷もひとめでわかります。

「本通り」には昔ながらの老舗商店がありますが、そもそも「本通り」のルーツは、瀬戸内海沿いを通る交通の要路として江戸時代に整備された西国街道(旧山陽道)で、本通りは広島の城下町を通るルートと重なっています。本通りで最も古い店舗は、1615年に創業した商店街のほぼ中央にある「赤松薬局」であること、浅野家の広島入府にしたがって、和歌山から大勢の商人が追従してきたこと、さらに160店舗が廃墟になった被爆後の本通りの様子が書いてあります。

そして本通りといえばアーケード通りであり、その歴史は古く、1954年(昭和29年)完成の初代アーケードから現在は3代目のアーケードだということです。「もし、アーケードがなかったら、本通りの今の賑わいはなかっただろう」といわれるほど、「本通り=アーケード」というイメージがあり、重要な役割を果たしているということもうなづけます。

現在は、郊外型ショッピングセンターが広島のいろいろなところに出来て、これから、本通り商店街はどう生き残っていくべきかを、模索していく状況になってきています。これまで長い時代背景を積み重ねながら経営してきた商店街は、どのような部分で他と差別化を図っていくかを考えていくことが、ビジネスの鍵となるかもしれません。未来の考察のため、本通商店街から南に並行する今新しい店が出店している元気な町「裏袋」や、また全国的に注目されている「高松丸亀町商店街」の事例も紹介してあります。

広島の町の活性化に、またあなたのビジネスヒントにつながる一冊です。この本を持って確かめながら歩き、「本通り」をはじめとした広島のいろいろな商店街のことを考えるきっかけとしていただければと思います。