タイトル
07.(画像ギャラリー)手書き原稿で味わう原民喜の世界
  所蔵の自筆資料のなかには、完成原稿に近いものから、作品の一部分、構想途中のメモなど、様々な形態が含まれております。
 その中から一部、完成原稿に近いもの(下自筆草稿類リスト内No.1〜8、11、12、15)を、画像で紹介します。本でも読むこともできる作品もありますが、ここでは民喜の世界を手書きで味わってみませんか?
 なお、部分草稿の方(下自筆草稿類リスト内No.16〜40)は、通して作品を鑑賞するものではありませんが、民喜の世界の成立過程を考えるうえで貴重な研究資料といえましょう。それらの裏面にも、様々な制作メモや草稿(部分)が残されています。ここではその一端をご紹介します。
原民喜の主な自筆草稿類リスト


完成原稿に近いもの -全編を通して味わう-

小説  ※資料名をクリックすると手書き原稿がご覧になれます。
資料名
出版事項
目録整理番号
枚数
冒頭部分
雑音帳 1〜63p、p7欠
896
62
彼が書斎に座って静かに黙想に耽っていると
死と愛と孤独 400字原稿2枚
897
2
原子爆弾の惨劇のなかに生き残つた私は
永遠のみどり 400字原稿37枚
903
37
梢をふり仰ぐと、嫩葉のふくらみに優しいものがチラつくやうだつた

ガリバー旅行記
資料名
出版事項
目録整理番号
枚数
冒頭部分
小人国 400字原稿84枚(p70欠)
898
84
「大騒動」
私はいろいろ不思議な国を旅行して、さまざまの珍しいことを、
大人国
400字原稿90枚(p86〜175)
899
90
「つまみあげられた私」
私はイギリスにもどつて二ヶ月もすると、また故国をあとに、ダウンスを船出しました。
飛島 400字原稿61枚(p1〜61)
900
61
「変てこな人たち」
私が家にもどると間もなく、ある日
フウイヌム 400字原稿63枚(p1〜63)
901
63
「馬の主人」
私は家にもどると、五ケ月間は、妻や子供たちと一緒にたのしく
あとがき 400字原稿5枚
902
5
ガリヴァは十六年と七ケ月の間、不思議な国国を旅行して来ました。

詩稿

資料名
出版事項
目録整理番号
枚数
冒頭部分
死について 200字原稿1枚
906
1
お前が凍てついた手で最後のマツチを
一つの星に 25×19cm原稿1枚
907
1
わたしが望みを見うしなつて暗がりの部屋に横たはつてゐる
鈴木その子嬢に B4ザラ紙1枚墨書き
910
1
明日、太陽は再びのぼり花花は地に咲きあふれ、


部分草稿 -裏にも貴重資料が!-

裏面にも貴重資料が!
原稿用紙の裏面からも草稿やメモが発見


  1994年にご遺族永井いく氏から一括して寄贈いただいた資料の中には、作品の一部分と思われる部分草稿が多数ありましたが、一部、それらの原稿用紙の裏面にもおびただしいメモや走り書きが見られました。
 それらの意味するところは長らく解明されていませんでしたが、2008年に入り竹原陽子さん(広島花幻忌の会会員)により、目録整理番号914の原稿用紙の裏面が「雲の裂け目」の草稿と特定していただくなど、徐々に解明がなされています。
 主に戦前の作品の原稿用紙の裏面を使って戦後に裏面を書いており、「飢えに苦しみ、紙も無く過去の自作を切り崩してまで書き繋いでいった執念の伝わってくる資料である。」との竹原氏の言葉どおり胸をうつものがあります。

※資料名をクリックすると手書き原稿がご覧になれます。
資料名
出版事項
目録整理番号
枚数
冒頭部分
部分草稿類
(表)原稿「玻璃」
(裏)草稿「雲の裂け目」
山田紙店400字原稿用紙5枚
※裏面も使用
914
5(裏面も5)
(表)「あの男もこの頃になつて、僕のこと頻りに憶ひ出したりなんか
(裏)私の父は大正六年二月二十七日夜半に死んだ。
部分草稿類
(表)草稿「不思議」
(裏)草稿「死と愛と孤独」
山田紙店400字原稿用紙1枚
※裏面も使用
915
1(裏面も1)
(表)と何か考えてゐる。支那人は牛に乗つて進んでゐる積り
(裏)死と愛と孤独(わが心の自我像)
部分草稿類
(表)原稿「暗室」
(裏)草稿「鎮魂歌」
紀伊国屋400字原稿用紙1枚
※裏面も使用
930
1(裏面も1)
(表)しんは周章して荷馬車のところへ飛出し、「これは私の娘です。何か悪いこと
(裏)廣島の悲劇を背景に観念的抒情的幻想的ロマン

参考までに
解明の状況は下記の資料に詳細が掲載されています。

  • 「未発表原稿(タイトルなし)」原民喜
    解説:竹原陽子 『三田文学』2008年春号No.93
  • 「特集 原民喜資料の新たな展開」
    海老根勲・竹原陽子 著 『雲雀』第8号


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