広島市まんが図書館では、“まんが”に関するさまざまな資料を収集しています。
そのなかで、特徴のあるものを、ご紹介します。
日本の「まんが」は、さまざまな文化の影響を受け発展し、21世紀の今、総合的な文化として認知され、世界に発信されるまでになっています。
一直線に現在の「まんが」に通じるものではありませんが、広島市まんが図書館では、日本文化の流れのなかで「まんが」の歴史をとらえて、それを知る便として、古書や復刻版等を歴史的資料として収集、所蔵しています。
「まんが」のルーツを探り、歴史をたどる、そんなコレクションです。
時代 | 西暦 | 主な出来事 |
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平安 | 12世紀 | 肉筆絵巻「鳥獣人物戯画」制作。猿、兎、蛙などをユーモラスに表現。 |
江戸 | 17世紀 | 滑稽(こっけい)で簡略な民画“大津絵”が大津(現・滋賀県大津市)土産として流行。 |
18世紀 | 長い手足、誇張・省略表現が特徴の戯画“鳥羽絵(とばえ)”が流行。 | |
1814 | 浮世絵師・葛飾北斎が絵手本集『北斎漫画』を刊行。 世相を風刺した浮世絵、戯画入りの瓦版が流行。 |
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1862 | C.ワーグマンが外国人向けの漫画雑誌「ジャパン・パンチ」を創刊。 | |
明治 | 1874 | 仮名垣魯文、河鍋暁斎が日本初の漫画雑誌「絵新聞日本地(えしんぶんにっぽんち)」を創刊。 |
1877 | 野村文夫が本格的な時局風刺漫画週刊誌「團團珍聞(まるまるちんぶん)」を創刊。 | |
1887 | G.ビゴーが時局風刺雑誌「(トバエ)」を創刊。 | |
浮世絵師が、石版や銅版刷の小型本“ポンチ本”を出版。 | ||
1901 | 宮武外骨が辛辣な政治風刺漫画を掲載した「滑稽新聞」を創刊。 | |
1902 | 『時事新報』に色刷りの日曜特集紙面「時事漫画」が登場。 | |
1905 | “日本近代漫画の父”北沢楽天が「東京パック」を創刊。 | |
大正 | 1921 | 岡本一平が「人の一生」を発表。主要新聞が競って連載漫画を掲載。 |
1923 | 織田小星(文)、樺島勝一(画)が「正チャンの冒険」を発表。“正チャン”は国民的漫画ヒーローに。 | |
昭和 | 1928 | 『現代漫画大観』(全10巻)など、漫画全集出版ブーム。 講談社、中村書店らが子供漫画を出版。 |
1931 | 田河水泡が「のらくろ二等卒」を発表。のらくろがブーム。 | |
1944 | 新聞から漫画が姿を消す。 | |
1945 | 第二次世界大戦が終戦。漫画雑誌が相次いで復刊、創刊。 | |
1946 | 新聞漫画が復活。長谷川町子が「サザエさん」を発表。 | |
1947 | 大阪を中心に“赤本漫画”が流行。 酒井七馬(構成)、手塚治虫(画)が『新宝島』を出版。大ベストセラーに。 山川惣治が『少年王者』出版。絵物語がブームに。 |
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1953 | 手塚治虫が「リボンの騎士」を発表。 | |
1954 | 「文藝春秋臨時増刊・漫画讀本」が創刊。大人の漫画がブーム。 | |
1956 | 貸本漫画雑誌からリアルなストーリー漫画“劇画”が誕生。 | |
1959 | 白土三平が『忍者武芸帳』を発表。劇画がブームに。 初の少年漫画週刊誌「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」が創刊。 |
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1962 | 赤塚不二夫が「おそ松くん」を発表。 | |
1963 | 「鉄腕アトム」、「鉄人28号」などのテレビアニメが放映開始。 | |
1964 | 青年向け漫画雑誌「月刊漫画ガロ」が創刊。 | |
1966 | 梶原一騎(作)、川崎のぼる(画)が「巨人の星」を発表。 スポーツをテーマにした漫画“スポ根(こん)漫画”が流行。 「COM」(1967)、「ビッグコミック」(1968)などの青年向けの漫画雑誌が相次いで創刊。 |
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1968 | 高森朝雄(作)、ちばてつや(画)が「あしたのジョー」を発表。 つげ義春が「ねじ式」を発表。漫画に新境地を開く。 |
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1972 | 「スヌーピーとチャーリー・ブラウン」など、外国漫画の紹介が盛んに。 | |
1974 | 池田理代子の「ベルサイユのばら」が宝塚歌劇に登場。ブームに。 「花とゆめ」(1974)、「プリンセス」(1975)、「LaLa」(1976)、「ぶ~け」(1978)などの少女漫画誌が相次いで創刊。 |
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1976 | 漫画文庫本出版ブーム。 美内すずえが「ガラスの仮面」を、竹宮恵子が「風と木の詩」を発表。 |
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1979 | アニメ化により、藤子不二雄の「ドラえもん」がブームに。 | |
1980 | 漫画の発行部数が、全出版物の年間総発行部数の4分の1に。 | |
1981 | 四コマギャグ漫画ブームに。 | |
1983 | 大友克洋の「童夢」が漫画として初めて日本SF大賞を受賞。 | |
1985 | レディースコミック誌が相次いで創刊。 | |
1986 | 石ノ森章太郎が『マンガ日本経済入門』を出版。 | |
1988 | 鳥山明の「DRAGON BALL」が大人気。「週刊少年ジャンプ」の発行部数が500万部を突破。 | |
平成 | アニメなどにより、やなせたかしの「アンパンマン」がブームに。 |
12世紀に製作された肉筆絵巻。京都高山寺に伝わる国宝。伝鳥羽僧正覚猷作。
動物や人物を描いた戯画で全四巻として伝わっていますが、ことに猿、兎、蛙などを、擬人化したユーモラスな筆致で描いた甲巻が有名で、「日本最古の漫画」とも言われています。
広島市まんが図書館では、複製版(甲巻)とミニチュア版複製(全4巻)を所蔵しています。
鳥獣人物戯画をはじめ絵巻物は、漫画やアニメーション表現につながるものとも言われています。
広島市まんが図書館では、平安時代中期の「信貴山縁起」と平安時代末期の「伴大納言絵詞」のミニチュア版複製を所蔵しています。
18世紀半ばに流行した滑稽絵。長い手足、誇張・省略表現が特徴の戯画で、版本の形で全国に広まった「江戸の漫画」とも言われているものです。
広島市まんが図書館では、版本5冊を所蔵しています。
浮世絵師・葛飾北斎が絵手本として発行したスケッチ画集。動物、人物、庶民の風俗から妖怪まで、さまざまな絵が収められています。1814(文化11)年の版本刊行から好評を得て、1878(明治11)年まで15冊が刊行されました。
広島市まんが図書館では、1878年刊の全15編を所蔵しています。
野村文夫が1877年に創刊した、本格的な時局諷刺漫画週刊誌。イギリスの「パンチ」を範とし、風刺漫画等が人気を博し、1907年まで刊行されました。
広島市まんが図書館では、1884年刊行の3号を所蔵しています。
「日本近代漫画の父」とも称される北沢楽天が1905年に創刊したフルカラー漫画雑誌。
B4変形判に全頁フルカラーという画期的な誌面が人気を呼びました。
広島市まんが図書館では、北沢楽天が主筆の明治40年刊行のものと、大正2年刊行のものの2号を所蔵しています。
織田小星文、樺島勝一(東風人)画で、アサヒグラフで連載を開始した子供向けの漫画。
主人公の少年“正チャン”(しょうちゃん)は、国民的漫画ヒーローとなりました。
広島市まんが図書館では、1924年から1925年に朝日新聞社から7集が刊行された、四色刷の横長本『正チャンの冒険』全7集を所蔵しています。
『現代漫画大観』全10巻の刊行など、漫画全集の出版がブームとなりました。
『現代漫画大観』は、第1編 現代世相漫画、第2編 文芸名作漫画、第3編 漫画明治大正史、第4編 子供漫画、第5編 滑稽文学漫画、第6編 東西漫画集、第7編 日本巡り、第8編 職業づくし、第9編 女の世界、第10編 近代日本漫画集、と各巻ごとにさまざまなテーマを設け、まさに漫画の大観となっています。
広島市まんが図書館では『現代漫画大観』を全10巻揃いで所蔵しています。
山川惣治作・画の『少年王者』が出版され、絵物語がブームとなりました。
広島市まんが図書館では、『少年王者』の第4集、第5集を所蔵しています。
南部正太郎・作の『ヤネウラ3チャン』は1946年3月12日付から1949年4月ごろまで大阪新聞に連載され一大ブームとなった4コマ漫画です。
広島市まんが図書館では、新聞連載された『ヤネウラ3ちゃん』をはじめ、3ちゃんシリーズを7タイトル所蔵しています。
手塚治虫が「少女クラブ」(講談社)に「リボンの騎士」を発表。1953年1月号から1956年1月号まで連載され、人気をよんだ手塚治虫の代表的な少女漫画ともいえる作品です。
広島市まんが図書館では、当初単行本化された全3巻のものを所蔵しています。
「文藝春秋臨時増刊・漫画讀本」が創刊。大人の漫画がブームとなります。
広島市まんが図書館では、1954年12月の創刊号から、1970年9月号(この号をもって休刊)まで、欠号もありますが、所蔵しています。
初の少年漫画雑誌「週刊少年マガジン」(講談社)、「週刊少年サンデー」(小学館)が相次いで創刊し、人気をよびました。
広島市まんが図書館では、1959年の各、創刊号を所蔵しています。
※コレクションでご紹介した、古書、復刻版等は、貴重資料として所蔵しております。
※貴重資料の内、時代が新しく、状態の良いものについては、館内閲覧が可能なものありますが、資料保存のため、閲覧していただけないものもございます。ご了承ください。また、本の劣化等により、従前閲覧いただけたものが、閲覧不能となることもあります。
2階閲覧室のふれあいルームの中に「ひろしまコーナー」があります。
広島市出身および在住等のゆかりの作家の作品、または、作品主題等が広島に関わるまんがを「ひろしまコーナー」として集め、紹介しています。
広島市にゆかりの作家としていますが、例外として広島県出身作家の主要漫画賞受賞作も含んでいます。
作品主題等が広島に関わるまんがとしては、原爆をあつかったものや、作品舞台が明らかに広島市で、背景や方言などにひろしまを楽しめるまんがとしています。
※ある程度の期間、作家活動をし、複数の作品を継続的に出版されている方を対象作家としています。
※まんが作家は、略歴等を明らかにしていない方も多いため、新たな情報があった際には、随時、見直し、加除を行っています。
あすなひろし | (1941-2001)東京都池之端生まれ、広島県修道学園高校(広島市)卒。 1959年『まぼろしの騎士』でデビュー。1973年『とうちゃんのかわいいおヨメさん』と『走れ!ボロ』で第18回小学館漫画賞受賞。そのほかに原爆を素材とした『山ゆかば』や、『青い空を、白い雲がかけてった』『哀しい人々』など。 |
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うぐいすみつる | 広島市出身。TONOは姉。 『よからぬ話』『妊娠ちゃちゃちゃ!!』『子育てちゃちゃちゃ!!』など。 |
甲斐さゆみ | 広島市在住。 『実録!看護婦物語』『The ナース』など。 夫・迫田良明氏と当館まんが教室の講師も務める。 |
かわぐちかいじ | (1948~)広島県尾道市出身。 1968年『夜が明けたら』でデビュー。 1987年『アクター』で第11回、1990年『沈黙の艦隊』で第 14回、2002年『ジパング』で第26回講談社漫画賞受賞。 2006年『太陽の黙示録』で第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第51回小学館漫画賞受賞。 そのほかに『イーグル』『バッテリー』『太陽の黙示録 建国編』など。 |
こうの史代 | (1968~)広島市出身。 1995年『街角花だより』でデビュー。 広島を舞台とし、原爆を描いた『夕凪の街 桜の国』で2004年第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、2005年第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。 そのほかに『長い道』『この世界の片隅に』『さんさん録』など。 |
東風孝広 | (1972~)広島県呉市出身。 1998年『五番街』で週刊ヤングマガジンのちばてつや賞ヤング部門入賞。広島市が舞台の『カバチタレ!』『極悪がんぼ』など。 |
TONO | 広島市出身。うぐいすみつるは妹。 1983年『しましまえぶりでぃ』でデビュー。 『カルバニア物語』『チキタ★GuGu』など。 |
小山鹿梨子 | 広島市出身。 2009年『保健室の鈴木くん』でデビュー。 『もやし男と種少女』『シェリル キス・イン・ザ・ギャラクシー』『校舎のうらには天使が埋められている』など。 |
中沢啓治 | (1939~2012)広島市出身。 1945年広島で被爆。1963年『スパーク1』でデビュー。 1973年より自伝的作品『はだしのゲン』を連載開始。被爆体験をリアルに描写し、高い評価を受ける。 その他に『黒い雨にうたれて』『ある日突然に』など。 |
永田正実 | 広島市出身。 広島市在住の18歳の時に『あなたに伝えたい』でデビュー。 『恋愛カタログ』『シャウト!』など。 |
松本美緒 | (1965~)広島市出身。 広島市在住の1982年高校在学中に『惜春ストリート』でデビュー。 『彼女の彼』『Two Hearts』『ラヴァーズ』『優雅で野蛮な女たち』『青春上等!!』など。 |
麻刀城ひとみ | 広島市の専門学校などで講師を務めている。 『M.L.A.-一番激しいキス-』『月と歩こう!』など。 |
杜野亜希 | 広島市出身。 1987年『ニセアカシアの魔法使い』でデビュー。「神林&キリカシリーズ」、『碧のミレニアム』『Dの女』など。 |
八神健 | (1966~)広島市出身。 『ふわふら』『蜜・リターンズ!』『きりん』『ななか6/17』『どきどき魔女神判!』など。 |
短編集のなかの1編等、ひろしまコーナー外のまんがも含む、まんが図書館原爆関係資料リストです。
原爆関係まんが資料リストを見る [PDF:75KB]
2階ふれあいルーム内に、外国語に翻訳されたまんがを中心に、外国語のまんがを集めた「外国語まんがコーナー」があります。
日本でおなじみの作品の外国語訳本や、アメリカン・コミックスなど外国語まんがを集めています。