沿革・コレクション

アメリカから贈られてきた20世紀前半の子どもの本 ─ベル・コレクション調査報告─

2.20世紀前半の子どもの本の状況

 「ベル・コレクション」は、19世紀後半に出版されたものも含まれているものの、広義に解釈して「20世紀前半の多様な子どもの本」のコレクションと言えるだろう。南北戦争(1861-65)後、アメリカでは「合衆国」としての誇りが持てる国になるためにアメリカ的なものの追及が始まっており、20世紀前半は、その成果が目に見えてくる時代であった。

 第一次世界大戦(1914-19)、世界恐慌(1930年前後)、第二次世界大戦(1939-45)という大きい歴史の影響を受けながら、アメリカの子どもの本が成立していく背景として、印刷、特にカラー印刷の発達、雑誌・新聞などジャーナリズムの隆盛、識字を中心とした学校教育や読書指導のカリキュラム化、子ども図書館運動や賞の制定、アメリカ・グラフィックアート協会の活動、ヨーロッパからの文化難民の作家や画家の活躍など、多くの要因があげられる。

 こうした状況のなかで、まず、当時、無数といってよいほど出版された安易に作られた海賊版や扇情的な物語で人気の「10セント本」などへの対策を立てる必要があった。経済的文化的に豊かでない階層の子どもを念頭において、1887年、初めて公共図書館に子ども室ができ、以後、そのネットワークは全土に広まっていく。子どもの本屋やHorn Book Magazineという書評雑誌も創刊されていった。また、教育学と心理学の分野で大学を卒業した多くの女性が活躍しはじめ、子どもの発達段階や興味分野などの研究が進み、幼児向きの新しい絵物語が生まれている。加えて、海外からやってきた作家やアーティストがアメリカ文化に触れて制作した作品群には、お手本としてきたイギリスの子どもの本にはなかった新鮮でエネルギーが感じられる作品があり、子どもの本として高く評価された。1922年にニューベリー賞、1938年に絵本を対象としたコルデコット賞が制定されると、保守的であった出版社にも児童書部門が順次できていって新しい感覚の子どもの本が刊行されていく。その背景には、優れた編集者の存在があった。

 大きくまとめれば、この半世紀のなかで最も大きい影響を与えたのはメディアの変化で、経済の発展によるマス・コミの成立であった。新聞・雑誌から生まれたコミックの隆盛、ラジオ番組からの作品化、映画、特に、ディズニー映画の既存作品のアニメ化と、逆にそれらの絵本化、作品化などである。そうしたマス・コミへの批判や対策が家庭や学校や図書館などで論議されて、それに対抗できる児童文化財、特に、本に対する関心が高まっていった。

 こうした背景を念頭において、以下で「ベル・コレクション」の本を通して、具体的に「20世紀前半のアメリカの子どもの本」を見ていくことにする。

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