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サテライト展示 浅野文庫所蔵資料紹介 「東都名所霞ヶ関名所」

カテゴリー:中央図書館
記事分類:イベント公開日:2021年3月16日

中央図書館の特別コレクション「浅野文庫」の所蔵資料を紹介します。
今回紹介する資料は、浅野家上屋敷が所在した霞ヶ関を描いた浮世絵10点をまとめた「東都名所霞ヶ関名所」です。

期間

令和3年2月16日(火)~3月30日(火)予定

会場

中央図書館 2階 サテライト(北側)

なお、「東都名所霞ヶ関名所」はデジタルアーカイブ「広島市立図書館貴重資料アーカイブ」で、画像を公開しています。
拡大して見ることで、彫りの細かさや、摺りの技法、版木の木目などをじっくり観察することができます。この機会に、ぜひアクセスしてみてください。

展示の様子

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展示内容
  1. 浮世絵(うきよえ)とは

    浮世絵とは、江戸時代に誕生した日本絵画の一つで、江戸の風俗を題材としたものを指す。作品形態には肉筆画(にくひつが)と木版画(もくはんが)があり、特に木版画は大量生産が可能であるため、今の価値に換算して数百円程度という安さで庶民に浸透した。
    浮世絵木版画は出版社の役割をする版元(はんもと)の企画のもとに、版下絵(はんしたえ)を描く絵師、版木(はんぎ)を彫る彫師(ほりし)、それに絵の具を着けて摺(す)る摺師(すりし)という三者の技術によって完成される。なかでも、色ごとに版を彫って摺り重ねる多色刷りの錦絵(にしきえ)は、高度な技術の結晶で、多いものでは10色以上の色版を重ねた豪華な多色摺版画も登場した。
  2. 霞ヶ関坂(かすみがせきざか)

    「東都名所霞ヶ関名所」に描かれているのは、東京都千代田区霞が関にある霞ヶ関坂で、現在は人事院と外務省の間にある。
    江戸時代、このあたりは大身の大名の上屋敷(かみやしき)が建ち並ぶ地域で、坂の上から望む江戸湾の景色が江戸名所に数えられていた。
    坂は西から東へ下っており、坂の下から見て右側に広島藩浅野家の上屋敷、左側に福岡藩黒田家の上屋敷があった。
    浮世絵のなかで、浅野家上屋敷の表御門が朱塗りで描かれているものがある。これは将軍の息女が輿入れしたことを示す御住居門(おすまいもん)と呼ばれるもので、天保4年(1833年)11月に、11代将軍家斉(いえなり)の24女末姫(すえひめ)が9代藩主斉粛(なりたか)に輿入れしたため構えられた。
    歌川広重が霞ヶ関坂を題材にして描いた浮世絵は約17種あるといわれ、「東都名所霞ヶ関名所」には8種が収められている。
    ・(参考)〔江戸切絵図〕外桜田永田町絵図(国立国会図書館デジタルコレクションより)嘉永2年(1849年)~文久2年(1862年)刊

    ここで、広重が描いた浮世絵2点から霞が関の様子を確認してみよう。
    (番号は「広島市立図書館貴重資料アーカイブ」内の識別番号)

    10「東都名所 霞ヶ関全図」
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    歌川広重/画 45×80cm(台紙を含む) 南伝馬丁一丁目蔦や吉蔵板 1枚
    天保3年(1832年)~天保5年(1834年)
    蔦屋吉蔵が、天保3年(1832年)から天保13年(1842年)にかけて出版した、大判3枚続の浮世絵揃物(そろいもの、シリーズ)のうちの1組。
    現在確認されている作品は22組で、かなり長期にわたる出版であった。3枚続の揃物では、全浮世絵中もっとも数の多い作品群である。
    中央に描かれた坂が霞ヶ関坂で、坂の右側が広島藩浅野家の上屋敷である。浅野家の屋敷には、将軍の息女が輿入れしたことを示す御住居門(赤門)が描かれている。屋敷内に見える木立は、浅野家上屋敷内の庭園「春秋園」の一部と思われる。

    6「東都名所 霞か関之図」
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    歌川広重/画 33×48cm(台紙を含む) 不明 1枚 
    天保3年(1832年)以降
    霞ヶ関坂の上から、江戸湾を見下ろす構図。
    版元の記載がないが、右上方に広重の別号「一立斎」の雅印があるため、広重が一立斎と改号した天保3年(1832年)以降の作と思われる。
    画面左側に描かれた赤い建物は、武家屋敷町の辻々に、幕府・大名・旗本が自警のために設置した「辻番所(つじばんしょ)」。警備している辻番人の左半身も描かれている。
    ・(参考)展示パネル「江戸御上屋敷絵図画像」[PDF:660KB]
        ※ 「広島市立図書館貴重資料アーカイブ」>「江戸御上屋敷絵図

  3. 絵師

    「東都名所霞ヶ関名所」にまとめられた浮世絵の、絵師ごとの内訳は、歌川広重8点、歌川国貞(3代豊国)1点、歌川国芳1点である。
    ・(参考)展示パネル「歌川広重・歌川国貞・歌川国芳について」[PDF:498KB]

  4. 歌川広重が描いた浮世絵

    1「江都(えど)名所 かす美か世紀」
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    歌川広重/画 33×48cm(台紙を含む) 芝神明前喜鶴堂板 1枚
    天保3年(1832年)~天保5年(1834年)
    佐野屋喜兵衛が天保3年(1832年)~天保5年(1834年)にかけて出版した、浮世絵揃物 全11枚のうちの1枚。
    右下枠外の「喜寉堂(きかくどう)(喜鶴堂)」印は、はじめ朱印であったが、版を重ねると墨印、さらに屋号の「佐野喜」印に替わり、さらなる後版は「佐野喜」印を削除している。当資料は「喜寉堂」の朱印があるため、早い段階で刷られたものと思われる。
    霞ヶ関坂の上から、江戸湾を見下ろす構図で、斜面を描かず坂の上とそこから眺望できる低い場所だけを描いている。画面の右側には三味線を持つ門付(かどつけ)の女たち、しゃぼん玉売りが描かれ、左側には大きな傘に入って歩く住吉踊りの踊り子、青竹売りが描かれている。中央にはしゃぼん玉が浮かび、大名の一行が坂を下りてゆく、というのどかな昼下がりの風景である。

    8「東都名所 霞か関夕景」
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    歌川広重/画 48×33cm(台紙を含む) 松原堂板 1枚
    天保6年(1835年)~天保9年(1838年)
    藤岡屋彦太郎が、天保6年(1835年)~天保9年(1838年)にかけて出版した、浮世絵揃物 全20枚のうちの1枚。
    短冊版という制約された画面の中で、広重は構図、とりわけ絵描きの目線から対象物までの位置、角度、距離などをさまざまに工夫し、多様な江戸風景を描写している。

    2「江戸名所 霞か関之景」
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    歌川広重/画 33×48cm(台紙を含む) 芝神有田屋板 1枚
    天保11年(1840年)頃~天保13年(1842年)
    有田屋清右衛門が、天保11年(1840年)から弘化4年(1847年)にかけて出版した、浮世絵揃物 全20枚のうちの1枚。
    俳諧連(はいかいれん)(俳諧を読む人たちの集まり)がスポンサーとなって作成したもので、それぞれに俳諧が記されている。
    当資料には「千代田からいく重そ沖の遠霞 梅月庵芦雪」と記される。

    3「東都名所 霞かせきの図」
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    歌川広重/画 33×48cm(台紙を含む) よし町川岸山本板 1枚
    天保14年(1843年)~弘化4年(1847年)
    山本屋平吉が、天保10年(1839年)~弘化4年(1847年)にかけて出版した浮世絵揃物全12枚のうちの1枚。配色のすっきりした佳作。全12枚は当初、12か月を意図したものと思われる。

    7「江戸名所 霞か関」
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    歌川広重/画 33×48cm(台紙を含む) 藤慶板 1枚
    弘化4年(1847年)~嘉永5年(1852年)
    藤岡屋慶次郎が、天保10年(1839年)~嘉永5年(1852年)にかけて出版した浮世絵揃物全18枚のうちの1枚。広重晩年期の作品である。

    4「名所江戸百景 霞か世紀」
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    歌川広重/画 48×33cm(台紙を含む) 〔下谷新黒魚栄板〕 1枚 
    安政4年(1857年)1月
    魚屋栄吉が出版した、広重最大規模の揃物全119枚(2代広重作品と替内題作品を含む)のうちの1枚。人物の様子や、空に舞う凧から、新年の霞ヶ関坂を描いていることが分かる。
    坂の中央に描かれているのは、獅子舞や曲芸などで巡業し、正月には厄除けと祝言を述べた太神楽(だいかぐら)の一行。その左手で太神楽の一行に目をやっているのは、万歳(まんざい)である。裃(かみしも)姿で武家屋敷をめぐり、祝言を述べて舞った。その左手には寿司売がいる。
    太神楽の右手には、江戸城へ年始の挨拶にいった帰りであろう武士の一行が坂を上ってくるのが見える。その右手前には坂の方へ歩いていく親子連れの姿があり、子供は、羽子板を手にしている。親子の右には、扇箱買い(おうぎばこがい)がいる。扇箱買いは、年始に祝儀として扇を贈答する習わしを利用した商いである。

  5. 歌川国貞(3代豊国)が描いた浮世絵

    9「江戸名所百人美女 霞ヶ関」
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    歌川国貞(3代豊国)/画(左上名所絵:2代目歌川国久)48×33cm(台紙を含む) 芝神明前若与板 1枚 安政4年(1857年)~安政5年(1858年)
    複数の版元から出版された浮世絵揃物100枚のうちの1枚。国貞(3代豊国)晩年の美人画として代表的な作品である。
    中央には、10代藩主浅野慶熾(よしてる)の正室 利姫(寿操院)が描かれ、左上には霞ヶ関坂が描かれている。
    利姫は、天保7年(1836年)に御三卿の田安徳川家当主 斉荘(なりたか)の娘として江戸に生まれた。10歳のときに父・斉荘が死去したため、跡目を継ぐために養子に入った慶臧(よしつぐ)と婚約する。しかし14歳のときに、夫となるはずだった慶臧が死去してしまい、広島藩主浅野家の嫡男で、利姫と同い年の慶熾に嫁ぐことになる。安政5年(1858年)、慶熾は広島藩主に就任するが、わずか半年で急死。利姫は23歳にして未亡人となった。
    描かれた利姫は、既婚者だが出産していないため振袖を着ている。打掛の袖口は「大名袖」と呼ばれる広口で、袖口が開かないように飾り紐で留められている。柄は雲形の間に桜、杜若(かきつばた)、牡丹(ぼたん)、梅、菊がちりばめられている。髪は「奴(やっこ)島田」という上流の武家娘が結う髪型である。

  6. 歌川国芳が描いた浮世絵

    5「東都名所 かすみが関」
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    歌川国芳/画 33×48cm(台紙を含む) 両国かかや板 1枚
    天保2年(1831年)~天保3年(1832年)頃
    加賀屋吉右衛門が出版した、浮世絵揃物10枚のうちの1枚。国芳の風景画揃物作品中、最も代表的なシリーズである。
    坂の頂上から空を見上げる構図で、日差しの照り付ける中、霞が関の坂を行く人々を描く。坂の両側の建物と道が見えなくなることで、坂の傾斜を表現している。周囲には竹幹の模様枠が設けられている。

  7. 関連資料
     ・展示パネル「年表」[PDF:498KB]

  8. 関連本等

     (1) 展示した本
    ・『絵草紙屋江戸の浮世絵ショップ』(鈴木 俊幸/著、平凡社、2010年)
    ・『江戸浮世絵を読む』(小林 忠/著、筑摩書房、2002年)
    ・『浮世絵のことば案内』(田辺 昌子/著、小学館、2005年)
    ・『浮世絵 江戸庶民が愛したメディアアートの歴史・名品・技法』(田辺 昌子/監修、新星出版社、2011年)
    ・『広重TOKYO 名所江戸百景』(〔歌川 広重/画〕、小池 満紀子/著、池田 芙美/著、講談社、2017年)
    ・『歌川国芳 21世紀の絵画力』(歌川 国芳/〔画〕、府中市美術館/編、講談社、2017年)

     (2) 参考にした本
    ・『絵解き「江戸名所百人美女」江戸美人の粋な暮らし』(山田 順子/著、淡交社、2016年)
    ・『浮世絵事典《定本》』上・中・下巻(吉田 暎二/著、画文堂、1974年)
    ・『浮世絵大系 10 国貞/国芳/英泉』(座右宝刊行会/編集制作、集英社、1975年)
    ・『浮世絵大系 11 広重』(座右宝刊行会/編集制作、集英社、1975年)
    ・『広重』(内田 実/著、岩波書店、1978年)
    ・『原色 浮世絵大百科事典 第2巻 浮世絵師』(日本浮世絵協会/編、大修館書店、1982年)
    ・『日本の美術 32 広重』(小学館、1983年)
    ・『名品揃物浮世絵 7 国芳・英泉』(ぎょうせい、1991年)
    ・『広重名所江戸百景』(ヘンリー・スミス/著、安藤 広重/〔画〕、岩波書店、1992年)
    ・『広重江戸風景版画大聚成』(〔安藤 広重/画〕、酒井 雁高/編、小学館、1996年)
    ・『歌川広重の世界』(平木浮世絵財団/企画・編集、平木浮世絵財団、2017年)
    ・『日本史年表・地図 第25版』(児玉 幸多/編、吉川弘文館、2019年)

     (3) 参考にしたデジタルアーカイブ等
    Cultural Japan(カルチュラル・ジャパン)
    世界中で発信される日本文化に関するコンテンツ100万件を検索・閲覧できるプラットフォームです。
    インターネットで検索・閲覧が可能です。
    JAPAN SEARCH(ジャパン・サーチ)
    日本の幅広い分野のデジタルアーカイブと連携し、多様なコンテンツをまとめて検索・閲覧できるプラットフォームです。
    インターネットで検索・閲覧が可能です。
    錦絵でたのしむ江戸の名所
    国立国会図書館に所蔵している錦絵のうち、江戸中心部の代表的な名所103か所を描いた錦絵484点が掲載されています。
    インターネットで検索・閲覧が可能です。
    The Met Collection
    アメリカ・ニューヨークにあるメトロポリタン美術館が所蔵する37万点以上の作品画像を検索・閲覧できるデジタルアーカイブです。
    インターネットで検索・閲覧が可能です。
    Europeana(ヨーロピアナ)
    ヨーロッパの美術作品、工芸品、書籍、ビデオ、サウンドを検索することができるデジタルアーカイブです。2014年から日本語検索にも対応しています。
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    ・ジャパンナレッジ
    日本大百科全書をはじめ、50種以上の事典や辞典類を一括検索できるデータベースです。
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