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浅野氏入城400年記念事業平成29年度歴史講座「江戸時代の広島~浅野家と広島藩~」
(後期)第4回「徳川将軍家と広島藩浅野家―大奥から大名家へのお輿入れ―」を開催しました

カテゴリー:中央図書館
記事分類:お知らせ更新日:2018年3月16日

浅野氏入城400年記念事業平成29年度歴史講座「江戸時代の広島~浅野家と広島藩~」(後期)第4回「徳川将軍家と広島藩浅野家」が平成30年2月3日に開催されました。
その概要を簡単にご紹介したいと思います。

後期第4回「徳川将軍家と広島藩浅野家―大奥から大名家へのお輿入れ―」  
講師:尾道市立大学経済情報学部講師 森本 幾子さん

歴史講座後期第4回_1歴史講座後期第4回_2

概要

今回は、近世後期における徳川将軍家と広島藩の関係を、広島藩9代藩主浅野斉粛(なりたか)と徳川11代将軍家斉の二十四女「末姫(すえひめ)」の婚礼を通して紹介し、その正妻降嫁の意味について話をされました。

  1. 徳川家と浅野家の関係
    広島藩初代藩主浅野長晟の正室が徳川家康の娘(振姫)であり、二代藩主浅野光晟が将軍家光と従兄弟であるなど、藩政初期より深い血縁関係にあった。また、光晟以降、広島藩主は「松平安芸守」を唱え、本家は公的に「松平」姓を名乗るようになった。
  2. 徳川将軍家からのお輿入れ ―「末姫」と浅野斉粛の婚礼―
    文化文政期~天保期(江戸時代後期)、広島藩では、領内国産品生産の奨励とその移出による国益政策を推進、大阪商人に大きく依存した財政政策により厳しい財政難に陥っていた。
    そのような中、天保4年(1833)11月正式に婚儀が整い、執政年寄の関蔵人、今中大学が江戸城に登城し、婚礼全般を取り仕切ることとなったが、これは、幕府と広島藩の結びつきをより強固なものにしようとする意図が伺えるものであった。
  3. 婚礼費用
    本来、徳川将軍家から正妻を迎える場合は正式には「御入輿(ごじゅよ)御婚礼」と呼ばれていたが、当時は、幕府・諸藩とも経済的に逼迫した状況があり、略式化され「御引移(おひきうつり)御婚礼」と呼ばれた。略式とはいえ主なもので次のような多額な費用がかかっている。

    ① 上屋敷増築費など御婚礼に要する費用・・・11万813余両
    収入源の年貢米25万石を金に換算すると、416,666両となり、単純に見積もって現米収入の約4分の1に当たる費用がかかっていたと考えられる。
    ② 徳川将軍家(将軍・御台・江戸城本丸および西の丸の老中・惣女中など)へのお礼の品々
      例:公方様・・作り太刀/白銀30枚/巻物10/綿20抱
        内府様・・作り太刀/白銀20枚/巻物10/綿20抱
        御台様・・白銀20枚/綿20抱/二種1荷
    ③ 末姫お付きの者(御用達・御医師・諸用方など)へ勘定所(広島藩)からの出費・・708余両
    ④ 末姫お付き女中(大奥からの幕府女中衆)への宛行(あてがい)
     
    また、嫁入り道具として、浅野斉粛の官位と同格又は同格以上の大名家、合計57家から祝儀の品々が贈られた。
    例:同格の大名として、岡山藩主池田斉敏から「御膳十人前」、萩藩主毛利斉元から「御膳部一通・御行器具一荷」、鹿児島藩主島津斉興から「縮緬幕三」などが贈られている。
    格式が上の御三家(紀伊大納言、尾張中納言、水戸宰相)からも贈られている。
  4. 末姫と斉粛の関係
    ① 斉粛の広島初入国以降も、月2回程度、江戸広島藩上屋敷―広島城間で、「御早道(おはやみち)」
    と呼ばれる公式書状が交わされ、藩主妻子の息災や、江戸及び広島の人事、起こった事件等に関することを確認しあっている。
    ② 末姫は、将軍家から降嫁した女性の呼称「御住居」と呼ばれ、斉粛との生活では末姫上位の生活が営まれていた。幕府からの所領安堵にも、末姫からの願いがあったことが、年寄今中大学の日記に記載されている。
  5. その後の広島藩の文化事業との関わり
    天保6年(1835)の藩主斉粛の初入国に合わせ、歴代藩主の悲願であった、広島城の艮(うしとら)の方角(鬼門)に太祖浅野長政を祀る神廟「二葉山御社(現在の饒津神社)」を造営した。この太祖を神にする際には、京都の吉田家からの神号授与と幕府の許可が必要であるが、この造営には将軍家との婚姻が大きな役割を持っていたと考えられる。

このように莫大な費用を要したが、将軍家からの正室の降嫁は、所領安堵や幕府・諸大名家との関係強化をもたらした。また、二葉山神社の造営による「太祖神格化」により、斉粛の藩主としての資質や正当性を「饒津大明神」の加護のもとに示すことで、藩政の精神的統一を図ろうとしたものであったのではないかとまとめられた。

参考文献
  • 『広島県史 通史編 4 近世 2』(広島県/編、広島県 1984年)
  • 『徳川美術館蔵品抄7 婚礼』(徳川美術館/編、徳川美術館、1991年)
  • 『広島藩地方書の研究』(勝矢 倫生/著、英伝社、1999年)
  • 『徳川幕府事典』(竹内 誠/編、東京堂出版、2003年)
  • 『明治維新期の政治文化』(佐々木 克/編、思文閣出版、2005年)
  • 『今中文庫目録 近世今中家と広島藩』(広島大学図書館研究開発室/編、広島大学出版会、2006年)
  • 『徳川政権下の大奥と奥女中』(畑 尚子/著、岩波書店、2009年)
  • 『〈江戸〉の人と身分 4 身分のなかの女性』(吉川弘文館、2010年)
  • 「大名の婚姻に関する一考察‐幕末外様国持の海防動員に関連して‐」(三宅 智志/著)(文学研究科編『佛教大学大学院紀要』第39号、2011年)
  • 『図説大奥の世界』(山本 博文/編著、河出書房新社、2012年)
  • 『芸備地方史研究 第307号』(芸備地方史研究会、芸備地方史研究会、2017年)
関連本