まちの図書館化をめざして-21世紀広島市図書館計画の提言-
はじめに
広島市の図書館は、昭和6年(1931年)に広島市立浅野図書館として出発して以来70年余りの歴史をもっている。
この長い歴史の過程で、独立したこども図書館やまんが図書館の設置、各区への分館配置、全国的にも早い時期のコンピュータ導入などがなされ、また郷土広島に関する資料や原爆関係資料、広島文学資料など貴重な資料の蓄積も行われて、広島市の図書館としてその充実に向けた独自の歩みが続けられてきた。
一方、市町村合併の進行とともに、広島市が市域、人口とも拡大する中で、図書館としても各区への分館設置を進めるなどの対処を図ったものの、なかなか全市民の図書館需要に応え切れていない現状にあり、昨年度の統計でも図書館利用登録者は人口の約23%、市民の4人に1人の割合にとどまっている。
このような中で、本委員会は、21世紀の広島市における図書館の在り方や目指すべき方向性、及び図書館サービスの充実に向けた具体的施策の在り方についての提言を求められた。
本委員会においては、第4次広島市基本計画を踏まえ、広島市図書館の現状と課題の分析や市民アンケート調査の結果、中間報告に対して市民からお寄せいただいたご意見などを参考にしながら、「市民にとってどうすればもっと図書館が利用しやすいものとなり、活用されるものとなるか」という観点から議論を重ね、現時点で考えられる施策を提言としてとりまとめた。
本委員会は、広島市図書館が目指すべき施策の基本テーマとして「まちの図書館化」を提言する。
「まちの図書館化」とは、図書館サービスを市民生活のいたるところに行き渡らせ、市民の誰もが、いつでも、どこでも図書館サービスを活用することができる仕組みをつくることである。
これにより、「出会う」「つなぐ」「ふれあう」「支えあう」という図書館の基本的在り方を広島市において実現する。
「まちの図書館化」を具体化し、きめ細かなサービス機能の実現を図るため、330万冊の豊富な資料群の構築とその管理体制の確立、インターネットの活用や分館の計画的配置などのサービスの実現、中央図書館の再整備とサービスの高度化など10の目標を設定し、その施策例を示した。
その目標を実現する組織体制については、方向性は示したが具体的な提案までには至らなかった。中央図書館の再整備などの機会に、映像文化ライブラリーや文学館の在り方なども合わせて検討をお願いしたい。
本提言には、330万冊の蔵書構築、分館の整備、中央図書館の再整備など、長期的な取り組みが必要なものも含まれているが、提言の内容については、工夫を行ないながら、できるものから順次実施してもらいたい。
本提言が構想倒れとならないよう、行政計画に位置付けた上で、スケジュールを明確にして施策の展開を図られることを要望する。
今後、この提言が具体化され、「まちの図書館化」が実現して、広島市民の生活を豊かにし、全国や世界に誇りうる知的なまちとして、広島市が21世紀を通じてさらに発展していくことを切に願うものである。
21世紀広島市図書館計画検討委員会
委 員 長田 村 俊 作
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