畑耕一翻訳 M・R・ジェイムズ怪談集
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ぎこおろ プ イトゴブリン倍も恐ろしい話を、もう一つ知っているんだから、こんどの折には話そう―と笑う段取りだったろう。 【附記】 シェークスピアの“冬物語”第二幕第二場の終りは、こうなっている。― 王妃。お前は、なんたる賢いことじゃ。ここへおいで。母も聞こう。さあそばへおかけ。お話をして おくれ。 王子。陽気なお話? 陰気なお話? 王妃。いっとう陽気なのを。 王子。冬には陰気なお話が、いっとういい。 私には地ス精ラや悪鬼の話のお話があるの。 王妃。お聞かせ。それでいい。ここへ来ておかけ。おいで。そしてしっかりやって、この母を、お前の地精で驚 お前は強い子だ。 王子。ある男が― 王妃。さあ来て、おかけ。それから? 王子。或る男が、教会堂の墓のほとりに住んでいました。――私は、そうっとお話しましょう。そとの蟋蟀に聞 王妃。では、もっとそばへ来て、母の耳にそうっと言うがよい。かしておくれ。かれてはならない。― 82 ―

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