畑耕一翻訳 M・R・ジェイムズ怪談集
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バザザバ アンストルーザー夫妻は、エセックス州にある、ウェストフィールド・ホールの居間で、朝食をとっていた。二人は、その日のプランを立てていた。 『ねえ、ジョージ。』と、アンストルーザー夫人は言った。『わたし、あなたがマルドンまで、馬車でいらしったほうがいいと思いますわ。そして、わたしが今いったような編み物類を手に入れることができるか、やってみて頂きたいの。それで、わたし、慈善市ーのわたしの陳列台を飾りたいの。』 『いいとも。マリイ。お望みなら僕は、無論出かけるよ。だが今朝は、ジェフリ・ウィリアムスン君と、一ラウンド〔ゴルフ競技のひとまわり〕やろうと思って、支度しかけてるとこなんだ。慈善市ーは、来週の木曜までじゃなかったかね。そうだろう?』店という店へ、手紙を出さなくちゃならないくらい、察してくだすってもいいと思いますわ。しかも、その店は、はじめっから、値段も品質も、まったく気に入らないものを送ってくるにきまっていますわ。ほんとうにウィリアムスンさんとお約束なすったのなら、そうなさるがいいですわ。だけど、もっと早くから知らして頂きたかったわ。』い?』出かけの前、ついでに、わたしがきめておいた場所を見せに、コリンズ(下男)を連れて行って頂きたいわ。御存じですわね。無論。』『それがなにになりますの?ジョージ。わたし、マルドンでほしいものを、手に入れられなかったら、あの町中の『ああ、いやいや、ほんとうに約束したんじゃないよ。わかってるよ。行くよ。で、お前は一人でなにをするのだ『まあ。うちの仕事が片づいたら、わたし、新規な薔薇の園を設計しなくちゃなりません。あなた、マルドンへお薔薇の園― 30 ―

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